映像を見ていると、その色合いから「どこの国の作品だろう?」と感じることがありませんか?
その国の文化や気候、価値観が色に反映されているからこそ、映像には「お国柄」が表れるのです。特にカラーグレーディングの傾向を見ると、その違いは顕著です。
今回は、私が個人的に感じる映像の色彩傾向を、いくつかの国ごとに紹介したいと思います。
イギリス:緑が強い、湿り気を感じる映像
イギリス映画やドラマを見ると、どこか湿り気のある緑が強調されていることに気づきます。
その色合いは、霧や雨の多いイギリスの風景そのもの。ロンドンの曇り空、石畳の街並み、公園の深い緑――映像の中にそんな情景が浮かびます。
この緑は、ミステリアスな雰囲気や物語の重厚感を引き立てる効果があります。たとえば、『シャーロック』のような英国ドラマや、クラシックな時代劇の色合いは、緑を基調にしながら観る者をその世界に引き込む力があります。
日本:青が強い、静けさと涼しさの映像
日本の映像には、青が印象的に使われることが多いです。
それは、四季がはっきりしている日本の風景や、文化的な美意識を反映しているのかもしれません。青空、海、夜空、そして静かにたたずむ水面――こうした要素が青を基調とした映像に活かされています。
また、日本映画の多くは「涼しさ」や「静けさ」を伝えることが得意です。『君の名は。』や『千と千尋の神隠し』のような作品では、青のグレーディングが物語の透明感や繊細さを引き立てています。
アメリカ:黄色や赤が強い、エネルギッシュな映像
アメリカの映像といえば、明るく鮮やかな黄色や赤が印象に残ります。
それは、アメリカの広大な自然や多様な都市文化を象徴しているのかもしれません。カリフォルニアの太陽、ニューヨークのネオン、砂漠地帯のオレンジ色の夕焼け――これらの景色が、映像の中で鮮やかに表現されます。
特にアメリカ映画のアクションやコメディでは、このような暖色系の色彩が多く見られます。暖かく元気な印象を与え、観る者をエンターテインメントの世界に引き込むのです。『ラ・ラ・ランド』や『マッドマックス』のような作品では、その色彩の力強さが際立っています。
お国柄が色に表れる理由
なぜ映像の色彩にお国柄が出るのでしょうか?
その背景には、文化的な美意識や気候、自然環境が影響していると考えられます。たとえば、イギリスの曇りがちな天気は緑を、夏が蒸し暑い日本は青を、日差しの強いアメリカは黄色や赤を好む――といった具合です。
また、色は感情やストーリーを伝える重要な手段です。各国の映像制作者が、自国の視聴者が共感しやすい色合いを選ぶことで、結果としてその国独自の「映像の色彩」が生まれているのでしょう。
映像を色で旅する楽しさ
映像を見るとき、その色彩に注目してみると、より深く作品を楽しむことができます。
イギリスの緑に包まれた静かな世界、日本の青がもたらす静寂と涼しさ、アメリカの黄色や赤が生むエネルギー――その違いを感じることで、作品が持つ背景や文化に思いを馳せることができます。
次に映画やドラマを見るとき、ぜひその「色」にも注目してみてください。
映像の色彩は、スクリーンを越えて私たちを旅に連れて行ってくれるでしょう。
PicoLensでは、そんな「色の魅力」も含めて、映像やデザインを通じて皆さんに新たな視点を届けたいと思っています。
Change the lens, change the world――色彩が描く世界の広がりを、あなたの目で感じてみてください。